新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 、インフルエンザなどの呼吸器感染症の予防に対するお茶・カテキンの効果を検討した論文を検索しました。
現時点で、新型コロナウイルス感染症に対する予防効果は確認されていません。
同じウイルス性感染症であるインフルエンザの予防に対する効果を解析したメタ分析について調べたところ2報1,2) の論文が検索されました。
一方のメタ分析1) では、5件の RCT (介入研究) および3件の前向きコホート研究 (観察研究) が対象とされており、いずれもインフルエンザ感染の発生率低下との関連が示されていました。しかし、RCTでは5件中2件で高いバイアスリスクが認められており、コホート研究では1件でニューカッスル・オタワ尺度 (NOS) により科学的品質が低いと評価されていました。
また、5件のRCTにおける介入方法は、3件がうがい、2件がカプセル摂取でした。介入方法毎のサブグループ分析によると、うがいの予防効果は、1件の前向きコホート研究を含めて認められていません。また2件のカプセル摂取3,4) は、いずれもウイルス検査ではなく症状の発現率を評価したものでした。これらの内1件はウイルス抗原検査も実施していますが、感染率に影響は認められていません。3件の前向きコホート研究における介入方法は1件がうがい (前述) と2件が飲料摂取でした。飲料摂取の1件7) は、緑茶生産地の小学生を対象とした研究で、NOSの評価は低品質でした。飲料摂取のもう1件8) は、パンデミック発生前後の検査で、感染率に影響を及ぼす要因を分析したところ、緑茶摂取がインフルエンザ感染の発生率低下と関連していたが、紅茶の摂取は関連しなかったとの報告でした。
他方のメタ分析2) では、インフルエンザや上気道感染症をアウトカムとする10件の研究が対象とされていました。インフルエンザについては、5件のRCTと4件の前向きコホート研究を対象としたサブグループ分析により、発症リスク低下との関連が示されていました。しかしサブグループ分析の対象となったRCTでは、5件中3件で高いバイアスリスクが認められたことに加えて、全ての相対リスク比の95%信頼区間の上限が1 (プラセボと同等の効果) を超えていたことから、エビデンスの質は低いと考えられました。また前向きコホート研究については、NOS評価で低品質の研究が含まれていたことに加え、上気道感染症を含めた全体解析で出版バイアス (投稿された学術誌により結果が偏る可能性) が示唆されたため、エビデンスの質は非常に低いと考えられました。
なお、前向きコホート研究でNOS評価が高品質であった3件は、緑茶の摂取と感染率低下に関連が認められたが紅茶では認められなかった研究 (前出) 8) 、中学校の生徒を対象に碁石茶を自由摂取させた研究9) (但し、碁石茶には乳酸菌も含まれる10) ) および高齢者施設においてカテキン抽出液によるうがいで感染率の低下が認められた研究11) でした。低品質であった1件12) は、紅茶エキスによるうがいの効果を調べた研究ですが、『うがい無し』を対照としているため、紅茶そのものの効果を適切に判定することはできません。
また、お茶は風邪に良いと言われることから、風邪や上気道感染症の予防に対する効果を検討した論文を検索したところ、前述2報目のメタ分析2) における上気道感染症をアウトカムとしたサブグループ分析により、緑茶またはカテキンによる5件のRCTで症状発現率の低下と関連が認められていました。しかし、2件の試験でバイアスリスクが高く、相対リスク比の信頼区間上限が1 (プラセボと同等の効果) を超えていたRCTも2件認められたこと、およびインフルエンザを含めた全体解析で出版バイアスが認められたことから、エビデンスの質は低いと考えられました。
このサブグループ分析の対象となった5件のRCTにおける介入方法は、うがいが2件、飲料が1件、カプセルが2件でした。上気道感染症のみを対象とした場合、うがいの2件では影響は認められていません。関連が認められた3件のRCT において、カプセルの2件では、一方は自己申告による症状発現率に低下が認められましたが、罹患と判断された被験者数に影響は認められていません3) 。他方は医師の診断により発熱 (37.8℃以上) と2つの症状 (咳、喉の痛み、頭痛、または筋痛症のいずれか) の発現率に低下が認められていました4) 。飲料では、自己評価による鼻咽頭症状発現率にのみ低下が認められており、咽頭下部症状や全身症状に影響は認められていません5) 。
この他、カテキン飲料のRCTにおいて、自己申告による鼻水・鼻づまりと頭痛の中等度〜重度の日数に低下が認められたが、悪寒、熱感、関節痛、全身倦怠感、咽頭痛・咳などには影響が認められなかったとの報告がありました6) 。
このように、茶やカテキンには、インフルエンザ、呼吸器感染症の予防に一定の効果を有する可能性が示されています。しかし、インフルエンザについてはRCTで認められた効果はウイルス検査ではなく症状のみを評価したものであり、前向きコホート研究では低品質の論文が含まれていること、上気道感染症については試験によって効果のばらつきが大きいことなどから、現時点では有効性を示す十分な科学的根拠があるとは言えません。
新型コロナウイルス感染症に対する効果を検討した論文は、検索した範囲では見当たりませんでした。結果の過度な一般化には注意が必要です。
感染症に対しては、マスクの着用を含めた咳エチケット、手洗い (手指消毒) 、換気など、正しい予防を心掛けましょう。
参考ページ
- 新型コロナウイルス感染予防のために (厚生労働省)
- チャ (茶) (HFNet「健康食品」の安全性・有効性情報 素材情報データベース 統合情報)
- カテキン (HFNet「健康食品」の安全性・有効性情報 素材情報データベース 統合情報)
参考文献
インフルエンザ・上気道感染症
(メタ分析)
1) Rawangkan A, Kengkla K, Kanchanasurakit S, Duangjai A, Saokaew S. Anti-Influenza with Green Tea Catechins: A Systematic Review and Meta-Analysis. Molecules. 2021;26 (13):4014. (PMID:34209247)
9) Yoshioka S, Ju-Ngam T, Jobu, Yokota J. The protective effects of Goishi tea against influenza infection. Jpn Pharmacol Therap. 2013;41(7):705–709.(E2014095562)
10) 井上美江, 佐藤香澄, 大森正司, 加藤みゆき. 碁石茶に存在する微生物の性質について. 一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集. 2009;61:161.
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