プレバイオティクス(β-グルカン、オリゴ糖など)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19) に対しても効果があるようにうたう宣伝が見受けられますが、
現時点ではそのような効果は確認されていません。
同じウイルス性感染症であるインフルエンザに対する効果を検討した論文を検索したところ、予防効果を検討した論文は見つかりませんでしたが、一部の人でガラクトオリゴ糖の摂取が風邪やインフルエンザ症状を軽減したという論文が1報見つかりました。
また、上気道感染症への効果でみると、成人においては、β-グルカンの摂取で発症数の低下が認められた論文が1報、発症には影響がなかった論文が2報あり、発症に対する予防効果は一致していませんでした。そのうち1報では、発症後の症状の重症度にも影響は認められなかった一方、1報では重症度を軽減、また別の1報では一部の症状の改善を速めたと報告していました。
乳児においては、プレバイオティクス含有の調製乳やプレバイオティクスの摂取で気道感染症の発症数の減少がみられたという論文が2報、影響がなかったという論文が1報ありました。
プレバイオティクスの効果は、摂取するプレバイオティクスの種類や形態、量、摂取する人 の体調などにも依存すると考えられます。
現時点では、インフルエンザやウイルス性呼吸器疾患に対して「プレバイオティクスが効く」といえる十分な情報は見当たりません。
新型コロナウイルス感染症に対して検討した論文も見当たりませんので、情報の拡大解釈にはご注意ください。
新型コロナウイルスに対しては、手洗いなど、正しい予防を心掛けましょう。
新型コロナウイルス感染予防のために (厚生労働省)は、こちら
(参考文献)
・ガラクトオリゴ糖の摂取は、風邪・インフルエンザ症状の重症度を軽減 (2.5 g群ではすべてのストレス度、5.0 g群ではストレス度の低い群のみ)した。また、5.0g群のふつう体重の者においてのみ症状の持続期間を短縮させた
(PMID:21525194)Am J Clin Nutr. 2011 Jun;93(6):1305-11.
・酵母由来β-グルカンの摂取は、上気道感染症の重症度を軽減した
(PMID:30198828)J Am Coll Nutr. 2019 Jan;38(1):40-50.
・中高年(50-70歳)において酵母由来のβ-グルカンの摂取は、上気道感染症の発症、重症度に影響はなかった
(PMID:28606567)Nutrition. 2017 Jul – Aug;39-40:30-35.
・酵母由来β-グルカンの摂取は、上気道感染症症状のうち呼吸症状の改善を早めたが、他の症状に影響はなかった
(PMID:22465901)Nutrition. 2012 Jun;28(6):665-9.
・アスリートにおいてヒラタケ由来β-グルカンの摂取は、気道感染症の発症を減少させた
(PMID:21249381)Eur J Appl Physiol. 2011 Sep;111(9):2033-40.
・乳児においてプレバイオティクス(ガラクトオリゴ糖およびフラクトオリゴ糖)含有調製乳の摂取は、気道感染症の発症に影響はなかった
(PMID:29579345)J Paediatr Child Health. 2018 Aug;54(8):875-880.
・乳児においてガラクトオリゴ糖・ポリデキストロース含有調製乳の摂取は、上気道感染症の発症数を減少させた
(PMID:29494489 )Nutrients. 2018 Mar 1;10(3). pii: E286.
・乳児においてガラクトオリゴ糖・フラクトオリゴ糖の摂取は、上気道感染症の発症数を減少させた
(PMID:18492839)J Nutr. 2008 Jun;138(6):1091-5.
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