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【第30回】子どもにサプリメントを与える前に 

カテゴリー:専門家に聞きました
更新日:2026/03/16

共立女子短期大学生活科学科 准教授

佐藤 陽子(さとう ようこ)

もくじ

  1. はじめに
  2. サプリメントは必要?
  3. サプリメントは安全?
  4. おわりに

 

1.はじめに

 ドラッグストアやインターネット上には、たくさんの「子ども向けサプリメント」が並んでいます。
「成長を助ける」、「集中力を高める」、「免疫力をサポートする」といった宣伝文句をよく目にします。そんな魅力的な言葉を見ると、親として「何か足してあげた方がいいのでは」と感じてしまうかもしれません。特に、偏食がある、食が細い、忙しくて食事が簡素になりがち、などといった状況では、サプリメントは手軽で安心できる選択肢に見えるでしょう。でも、本当にそうでしょうか?
 子どもにサプリメントを与える前に、サプリメントの基本を正しく理解しておくことが重要です。
(本記事では、錠剤・カプセル・粉末・シロップなど、薬と同じような形状の健康食品をサプリメントと呼ぶことにします) 。

 

2.サプリメントは必要?

 「現代の子どもは栄養不足」「日本人は隠れ栄養失調」「最近の野菜は栄養が少ない」。だから、サプリメントが必要・・・そんな情報を目にしたことはありませんか?しかし実際は、日本国内で生活している多くの子どもたちにおいて、「普段の食事だけでは栄養素摂取量が不足して、健全な身体発育に支障が出てしまう」という状況に陥る可能性は非常に低いと考えられます。極端な偏食やアレルギー、その他の疾患などで通常の食事を摂ることが難しい場合は、保護者の判断でサプリメントを与えるのではなく、保健医療の専門職 (医師、薬剤師、栄養士・管理栄養士、保健師など) と相談して対処するのが基本です。
 また、スポーツ活動を行う子どもに対し、「激しい運動のため、より多くの栄養素摂取が必要となることから、サプリメントを積極的に利用すべきだ。」「パフォーマンス向上のため、サプリメントを上手に利用すべきだ。」とするスポーツ指導者や保護者が一定数いることが報告されています (1) 。しかし、子どもでは、必要となるエネルギーや栄養素は、食事とおやつから摂取することが基本です。そもそも、成長期の子どもにおいて、サプリメントを利用しなくては維持できないような運動量は避けるべきといわれています (2) 。パフォーマンス向上や疲労回復を目的とした安易なサプリメントの利用は、アンチ・ドーピング規則のルール違反につながる心配も指摘されています (1) 。
 このように、現在の日本では、健康な子どもが3食 (+おやつ) を十分に食べることが出来ていれば、サプリメントの利用を考える必要は、おそらくないだろうといえます。

3.サプリメントは安全?

 サプリメントは「食品だから安全」、「体に良いものだから安心」と思われがちですが、サプリメントを利用したことで、却ってからだに不調をきたしてしまうことがあります。発達・成長過程にある小さな子どもは大人と異なり、身体が出来上がっていないことから、外部から摂取した物質による有害な影響を受けやすいと考えられます。大人では何でもないものも、子どもでは害が出てしまうこともあります。 実際に、サプリメント利用後になんらかの体調不良を経験した人の割合は、成人・高齢者・妊婦と比べて、子どもが一番多かったという報告があります (3) 。この報告によると症状としては、嘔気、めまい、下痢、便秘、頭痛、腹痛、倦怠感、食欲不振、発疹、湿疹などが挙げられています。
 サプリメントは薬と似た形状であり、「副作用がなく、薬のような効果が得られる」と誤解されることが多いですが、薬とは全く異なるものとして付き合う必要があります。サプリメントは食品ですので、製造・販売に際し、薬のような徹底した品質管理は必要ありません。その規格・成分・安全性は製品により様々です。思いもよらない成分が混入していることもあります。また、薬と同じような病気の治癒や治療効果は期待できません。あくまでも、食事を補完するものです。
 また、成長や発達に必要な栄養素であっても、摂りすぎると中毒を生じる栄養素もあります。日本人の食事摂取基準 (2025年版) では、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、ヨウ素、セレンに子どもの耐容上限量 (これより多く摂取すると健康障害が発生するリスクが生じる量) が設定されています (表1、表2) (4) 。

 

表1 小児 (男児) の耐容上限量

栄養素 耐容上限量
1~2歳 3~5歳 6~7歳 8~9歳 10~11歳 12~14歳 15~17歳
ビタミン ビタミンA (μgRAE/日) ※1 600 700 950 1,200 1,500 2,100 2,600
ビタミンD (μg/日) 25 30 40 40 60 80 90
ビタミンE (mg/日) ※2 150 200 300 350 450 650 750
ナイアシン (mgNE/日) ※3 60 (15) 80 (20) 100 (30) 150 (35) 200 (45) 250 (60) 300 (70)
ビタミンB6 (mg/日) 10 15 20 25 30 40 50
葉酸 (μg/日) 200 300 400 500 700 900 900
ミネラル ヨウ素 (μg/日) 600 900 1,200 1,500 2,000 2,500 3,000
セレン (μg/日) 100 100 150 200 250 350 400

※1 耐用上限量は、プロビタミンAカロテノイドを含まない。
※2 α-トコフェノールについて算定した。α-トコフェノール以外のビタミンEは含まない。
※3 耐用上限量は、ニコチンアミドの重量 (mg/日) 、( )内はニコチン酸の重量 (mg/日) 。

 

表2 小児 (女児) の耐容上限量

栄養素 耐容上限量
1~2歳 3~5歳 6~7歳 8~9歳 10~11歳 12~14歳 15~17歳
ビタミン ビタミンA (μgRAE/日) ※1 600 700 950 1,200 1,500 2,100 2,600
ビタミンD (μg/日) 25 30 40 40 60 80 90
ビタミンE (mg/日) ※2 150 200 300 350 450 600 650
ナイアシン (mgNE/日) ※3 60(15) 80(20) 100(30) 150(35) 200(45) 250(60) 250(65)
ビタミンB6 (mg/日) 10 15 20 25 30 40 45
葉酸 (μg/日) 200 300 400 500 700 900 900
ミネラル ヨウ素 (μg/日) 600 900 1,200 1,500 2,000 2,500 3,000
セレン (μg/日) 100 100 150 200 250 300 350

※1 耐用上限量は、プロビタミンAカロテノイドを含まない。
※2 α-トコフェノールについて算定した。α-トコフェノール以外のビタミンEは含まない。
※3 耐用上限量は、ニコチンアミドの重量 (mg/日) 、( )内はニコチン酸の重量 (mg/日) 。

 

子ども向けのサプリメントは、子どもが摂取しやすいように形や味が工夫されているため、容易に過剰摂取してしまうことが懸念されています。また、子どもの耐容上限量を超える量の栄養素を含んだ製品が一般食品として流通していることも報告されており、知らず知らずのうちに、思っている以上の栄養素を摂取している可能性もあります (5) 。そのため、子どものサプリメントは、普段の食事からどれくらいの栄養素を摂取しているのか、きちんと把握したうえで、どうしても必要な場合のみ、不足分を補うために安全性に配慮しながら利用すべきです。

 

4.おわりに

 子どもによるサプリメント利用は、基本的に常にベネフィットよりもリスクの方が大きいと判断できます。「なんとなく健康に良さそう」という漠然とした理由で与えるのでなく、何を、何のために与えるのか目的をはっきりさせ、その必要性をよく考えたうえで子どもに与えるべきです。そして、サプリメントの利用中は、健康被害の防止のために、いつ・何を・どれくらいの量摂取させたのか、メモをとるとともに、子どもの様子をよく観察しましょう。何か異常が見られた場合には、すぐに利用を中止させてください。ある程度利用してもよい効果が実感できない場合も、漫然と利用を継続せずに中止しましょう。「なんだか面倒くさいな」と思った方は、はじめから与えないことをお勧めします。

参考資料
(1) 杉浦令子: 子どもの運動スポーツとサプリメント・ドーピング ~管理栄養士の視点から~. 小児保健研究. 2021.80(6):715-721.
(2) スポーツ栄養Web (参照2025/12/26)
(3) 「健康食品」の安全性・有効性情報サイトを活用した健康食品の安全性確保に関する研究報告書 (参照2025/12/26)
(4) 「日本人の食事摂取基準 (2025年版) 」策定検討会報告書 (参照2025/12/26)
(5) 瀧本秀美:サプリメントは飲んでよい?.小児内科. 2022.54(6):993-995.

 

佐藤 陽子 (さとう ようこ) 略歴
2000年共立女子大学家政学部卒業、2011年お茶の水女子大学大学院博士後期課程修了。共立女子短期大学、国立健康・栄養研究所(現、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)、城西大学などを経て2023年より現職。

 

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